ヒトのDNAは、細胞毎に46本の分子が存在し、各々は数cmの長さの巨大分子である。これまでは、このような巨大な分子を切断などの損傷をおこすことなく細胞から取り出し、外部の溶液に取り出すことは殆ど不可能であった。従って、現在用いられているゲノム診断や遺伝子異常などのDNAの分析手法は、数kp(キロ塩基対)かそれよりも短く断片化したもので行われてきた。巨大なゲノムDNAは撹拌やピペット操作などにより簡単切断されてしまうことが知られている。本論文では、DNAの一分子観察の実験より、撹拌初期にDNAの切断が高頻度でおこり、その後の定常的な撹拌操作では極めて切断が低頻度になることを見出した。実際、最初に穏やかに撹拌を開始し、その後、撹拌強度を強くしても、切断は低頻度に留まることを実験的に確かめている。このような発見は、今後のゲノムDNAの研究の発展に大いに寄与するものと期待される。国際誌Chem.Phys.Lett.に採択。菊池君(本年3月MC修了)が第一著者。

“Double-strand breaks in genome-sized DNA caused by mechanical stress under mixing: Quantitative evaluation through single-molecule observation”, Hayato Kikuchi, Keiji Nose, Yuko Yoshikawa, and Kenichi Yoshikawa, Chem. Phys. Lett., 701, 81-85(2018).