ポリアミンの化学構造の違いが、DNAの高次構造や遺伝子発現活性に与える影響を、実験と理論計算の双方の視点から明らかにした論文が、国際誌Int. J. Mol. Sci.に出版されました。ポリアミンは、すべての生物種が保有しているカチオン性の生理活性物質であり、様々な細胞機能に関与していると考えられています。本研究では、ヒトなど広範な生物が保有するポリアミンであるspermineと、その構造異性体であるthermospermine(植物に多く存在)、 N 4-aminopropylespermidine(好熱菌が産生)の3種の4価ポリアミンの作用を比較検討しました。その結果、遺伝子発現の抑制とDNAの凝縮転移の双方に対して、thermospermineが最も高い効果を示すことが実験的に示されました。理論計算においても二重ラセンDNAを構成するリン酸基に対してthermospermineが最も強く相互作用することを明らかにしました。このように本研究は、ポリアミンが引き起こすDNA高次構造変化が、遺伝子発現活性に直接関係していることを明らかにしたものとして、新規性の高いものとなっています。北川君(M2)、西尾君(D2)が第一、第二著者。名古屋市立大学の樋口教授、梅澤准教授、New York City Univ.のShew教授との共同研究。