小粒子が共存している閉鎖空間の中に閉じ込められた大粒子は、混雑度や境界条件の“硬さ”によりその局在化が決定されることを、モデル実験と理論計算を併用することにより明らかにした論文が、JPSJ(日本物理学会英文誌)にアクセプトされました。細胞では、多数の生体高分子で混雑する環境のもと核やミトコンドリアなどの顆粒が共存しそれが細胞膜で囲われた数十µmの閉鎖空間を自己組織的に構築し生命機能を発現しているが、そのような複雑系形成の基本的原理は不明です。本研究では細胞小器官などが組織化するメカニズムを模したシステムを実空間環境下(機械的ゆらぎを与えたマクロなモデル実験系)で構築しました。境界条件の異なる容器、それぞれの中に複数の小粒子と一つの大粒子を入れ、機械的な鉛直振動を加え、大粒子を加振中に追跡したところ、高混雑系では、硬い境界条件で内側に、柔らかい条件で外側に局在が見られた。それに対して、低い混雑系では、硬い境界条件で外側に、柔らかい条件で内側に局在することを明らかにした。熱ゆらぎのあるミクロな閉鎖系で、理論的なシミュレーションを行なったところ、マクロなモデル実験系での粒子の特異的な局在化の傾向が再現することも見出している。 本研究は、黒田さん(2021年度修士卒)が第一著者、鷹取博士(本研究室で博士課程を修了し、現同志社大学自己組織化科学研究センター研究員)が第二著者、Shew教授(NY州立大学)らとの共同研究。