生物の細胞内液において、カリウム(K)の含有量がナトリウム(Na)に比べてはるかに多いという事実は広く知られているが、その明確な理由は未だ明らかとなっていない。本研究では無細胞系遺伝子発現に対して、スペルミジン(SPD;細胞に存在するポリアミン)存在下、 K+が著しく遺伝子発現を促進し、その効果はNa+よりも大きいことを見出した。更に、Na+はK+よりもDNAへの結合力が高く、Na+はSPDのDNAに対する結合をより強く阻害することを実験的に明らかにした。これより、SPDはK+が豊富な条件においてDNAに有利に結合し、遺伝子発現活性を強く促進させていると推論される。地球上の生命の起源の謎解きのヒントにもなるような研究成果であると考えられる。これらをまとめた論文が国際誌PLOS ONEより出版された。西尾君(D2)が第一著者、杉野君(2018年度卒業生)が第二著者。本学理工学部の松本道明教授、生命医科学部の大江洋平教授との共同研究。

“K+ promotes the favorable effect of polyamine on gene expression better than Na+“, Takashi Nishio, Kaito Sugino, Yuko Yoshikawa, Michiaki Matsumoto, Yohei Oe, Koichiro Sadakane and Kenichi Yoshikawa, PLOS ONE, 15(9),e0238447, (2020).