超音波は画像診断に活用されるとともに、高出力の条件下では癌細胞に障害を与えることにより治療手段としても用いられてきている。超音波が、生体に対してどのような条件では安全であり、どのような条件では癌の治療に有効であるのかを明らかにすることは喫緊の重要な課題となっている。本研究では、溶液中でのDNA一分子観察の実験手法を用いることにより、中心周波数1 MHzの超音波パルスを照射した際のDNA二重鎖切断の発生頻度の定量的な評価を行なった。DNA二重鎖切断を引き起こす音圧には、閾値が存在し、閾値以下の音圧では損傷を引き起こさないことを明らかにした。また,マイクロバブル存在下でのDNA二重鎖切断についても実験を行い,DNA切断を引き起こす音圧の閾値が低下することを確認した。これらの研究結果をまとめた論文が、国際誌The Journal of the Acoustical Society of Americaに出版された。馬博士(本研究室で大学院(修士・博士)を修了し、昨年9月まで博士研究員、現在は京大高等研究院研究員)が第一著者、同志社大生命医科学部の秋山教授、千葉大の吉田准教授との共同研究。