生物の細胞内液において、カリウム(K)の含有量がナトリウム(Na)に比べてはるかに多いことは広く知られているが、その明確な理由は未解明である。これまでに、無胞系での遺伝子発現実験で、スペルミジン(SPD;細胞に存在するポリアミン)存在下、Na+とK+ の効果を比較すると、K+が著しく遺伝子発現を促進することを、私たちの研究室から論文として発表してきている(西尾らPLoS ONE (2020))。今回は、種々の1価陽イオン(Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、(CH3)4N+)の、転写・翻訳(TX-TL)および、翻訳(TL)のみに対する影響を無細胞系遺伝子発現により比較した。その結果、TX-TL、TLいずれにおいても、Rb+ > K+ > Cs+ > Na+ ≈ Li+ > (CH3)4N+の順に遺伝子発現を強く促進し、Rb+が最も強く遺伝子発現を促進することを明らかにした。これらをまとめた論文が国際誌Advanced Biologyより出版された。西尾博士(本研究室およびドレスデン工科大学博士研究員)が第一著者、政岡君(2021年度卒業生)が第二著者。ドレスデン工科大学のSchiessel教授との共同研究。