超音波は画像診断に活用されるとともに、高出力の条件下では癌細胞に障害を与えることにより治療手段としても用いられてきている。超音波が、生体に対してどのような条件では安全であり、どのような条件では癌の治療に有効であるのかを明らかにすることは喫緊の重要な課題となっている。本研究では、溶液中でのDNA一分子観察の実験手法を用いることにより、中心周波数1 MHzの超音波パルスを照射した際のDNA二重鎖切断の発生頻度の定量的な評価を行なった。DNA二重鎖切断を引き起こす音圧には、閾値が存在し、閾値以下の音圧では損傷を引き起こさないことを明らかにした。また,マイクロバブル存在下でのDNA二重鎖切断についても実験を行い,DNA切断を引き起こす音圧の閾値が低下することを確認した。これらの研究結果をまとめた論文が、国際誌The Journal of the Acoustical Society of Americaに出版された。馬博士(本研究室で大学院(修士・博士)を修了し、昨年9月まで博士研究員、現在は京大高等研究院研究員)が第一著者、同志社大生命医科学部の秋山教授、千葉大の吉田准教授との共同研究。

[更新日] 2021.06.21 [カテゴリー] 最新情報

生体内のゲノムDNAは、ノンコーディング領域を含め、その長さが数十µmから数cmに及ぶ巨大分子であり、短鎖DNAとは物理化学的な性質が大きく異なる。本研究では、無細胞系遺伝子発現実験によって、鋳型となるDNAの鎖長が1.7 kbpから25.7kbpになると、遺伝子発現の活性が1000倍増大することを見出した。また、これは、鎖長の長いDNAがそのコンフォメーションを変化させることで、転写部位でのRNAポリメラーゼ濃度を局所的に高めるためであると考えられる。原子間力顕微鏡による発現溶液中のDNA一分子鎖観察を行うことにより、このようなメカニズムの妥当性が裏うちされた。これらをまとめた論文が国際誌Scientific Reportsより出版された。西尾君(D3)が第一著者。京都大学の佐藤慎一准教授との共同研究。

[更新日] 2021.05.24 [カテゴリー] 最新情報

コーヒー粉末を含んだ懸濁液を乾燥させると、液滴の外周に粉末が円形に集合することはよく知られており、コーヒーリング効果と呼ばれている。それに対して、懸濁液を回転盤上で乾燥させると、乾燥初期にはうねうねしたパターンが現れ、後期にはサイズがほぼ揃ったmmスケールの円形パターンが多数出現することを見出した。この円形パターンの内部はwater-richの領域となっている。回転盤上で懸濁液は周期的な加速度を印加されており、これがmmスケールで、粉末をミクロ相分離させているとして理論的な解析も行った。原理的には、コーヒー粉末に限ることなく、粉末を含有する懸濁液で一般的に生じる現象であると考えられ、今後様々な粉体を含む溶液から自己組織化パターンを形成される新たな実験手法として研究が発展することが期待される。これらをまとめた論文が国際誌Physicsに出版され、highlight論文にも選出されました。上野さん(DC)、庄野さん(M2)、小川さん(M1)が第一、第二、第三著者。

[更新日] 2021.03.02 [カテゴリー] 最新情報

ポリアミンの化学構造の違いが、DNAの高次構造や遺伝子発現活性に与える影響を、実験と理論計算の双方の視点から明らかにした論文が、国際誌Int. J. Mol. Sci.に出版されました。ポリアミンは、すべての生物種が保有しているカチオン性の生理活性物質であり、様々な細胞機能に関与していると考えられています。本研究では、ヒトなど広範な生物が保有するポリアミンであるspermineと、その構造異性体であるthermospermine(植物に多く存在)、 N 4-aminopropylespermidine(好熱菌が産生)の3種の4価ポリアミンの作用を比較検討しました。その結果、遺伝子発現の抑制とDNAの凝縮転移の双方に対して、thermospermineが最も高い効果を示すことが実験的に示されました。理論計算においても二重ラセンDNAを構成するリン酸基に対してthermospermineが最も強く相互作用することを明らかにしました。このように本研究は、ポリアミンが引き起こすDNA高次構造変化が、遺伝子発現活性に直接関係していることを明らかにしたものとして、新規性の高いものとなっています。北川君(M2)、西尾君(D2)が第一、第二著者。名古屋市立大学の樋口教授、梅澤准教授、New York City Univ.のShew教授との共同研究。

[更新日] 2021.02.27 [カテゴリー] 最新情報

グルコースとその重合体(ポリマー)であるスターチ(ポリマー)の混合水溶液を乾燥させると、“ひび割れ”や“平面の層状剥離”、更には、“均質”な状態へと、グルコース含有量の増大に伴い、得られるパターンが転移することを見出した。水溶液表面からの水の蒸発に伴い、グルコースや水が“負の拡散”を示すことがこのような転移現象に関与していると考え、現象論的非線形拡散方程式を考案し、この数理モデルによりメカニズムの議論を行った。このような実験と理論を統合した論文が、国際誌Chemistry Lettersに採択されました。馬場さん(D2)、吉岡さん(2016年度卒業)、鷹取さん(博士研究員)が第一、第二、第三筆頭著者、生命医科学部大江洋平教授との共同研究。

[更新日] 2021.02.15 [カテゴリー] 最新情報

生物の細胞内液において、カリウム(K)の含有量がナトリウム(Na)に比べてはるかに多いという事実は広く知られているが、その明確な理由は未だ明らかとなっていない。本研究では無細胞系遺伝子発現に対して、スペルミジン(SPD;細胞に存在するポリアミン)存在下、 K+が著しく遺伝子発現を促進し、その効果はNa+よりも大きいことを見出した。更に、Na+はK+よりもDNAへの結合力が高く、Na+はSPDのDNAに対する結合をより強く阻害することを実験的に明らかにした。これより、SPDはK+が豊富な条件においてDNAに有利に結合し、遺伝子発現活性を強く促進させていると推論される。地球上の生命の起源の謎解きのヒントにもなるような研究成果であると考えられる。これらをまとめた論文が国際誌PLOS ONEより出版された。西尾君(D2)が第一著者、杉野君(2018年度卒業生)が第二著者。本学理工学部の松本道明教授、生命医科学部の大江洋平教授との共同研究。

[更新日] 2020.08.27 [カテゴリー] 最新情報

1 / 712345...最後 »